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AIが怖いのは、仕事の話ではない。

AI STRATEGY

AIで仕事が奪われる、という話はずっとされてきました。
ただ、今回引っかかったのは、そこではなかった。
GPT-6 Astraが画面を操作し始めたのを見て何を考えたかを書きます。

画面を操作し出した、という段差

これまでAIが伸びてきたのは、人が作る成果物の側だった。
文章、コード、画像、動画。
作れるものが増えていく進化で、次に何が来るかは前回との差から読めた。

Astraは、BlenderやUnreal Engineを自分で操作して、3Dのシーンを組み上げるところまで来ている。
作れるものが1つ増えた、という話ではないと思う。
人が道具を使う位置に、AIが入った。

数字の側にも出ている。
ARC-AGI-3という、未知の環境に放り込まれて、自分で試しながら解いていけるかを測る評価がある。
同じ表の推論や開発の列が数ポイントしか動いていないなかで、ここだけは前の世代が7.8%だったところに、Astraの99.9%が入っている。

そして、道具を使うという形は、物理世界の作業とほとんど同じだ。
見て、手を伸ばして、動かして、結果を見て、直す。
画面の内側か外側かしか違わない。

街に出て工事をする。車を運転する。家の中で洗い物をする。
あの世界線が、急に手前に来たように感じた。

怖いのは、仕事の話ではなかった

仕事が奪われる、という言い方をすると、失うのは職業ということになる。
それなら、別の仕事に移ればいい、別の技能を身につければいい、という話に落ちる。

実際に引っかかったのは、そこではなかった。

生まれて、義務教育を受けて、友達ができて、恋人ができて、成人して、働いて、お金を稼いで、いろいろなものを買って、余暇を楽しんで、家族を持って、死んでいく。
なんとなくの既定路線がある。

世界が回っているのは、一人一人がこの順番をなぞっているからだと思う。
稼ぐ人がいて、買う人がいて、次の世代がいる。
誰かが特別に優れているから回っているのではなく、大半が同じ形をしているから釣り合っている。

ただ、いま人がやっていることの大半は、AIができる側に寄ってきている。
崩れるのは職業ではなく、この順番の方だ。

止める側に、誰も立てない

これまでの進化は、横に伸びていた。
同じ軸の上で、数週間ごとに少し速く、少し正確になる。
今回は、上に来たと思う。
二次元のグラフに無理やり描くなら、急に跳ね上がった形になる。

一段上がると、そこからはまた横に進み始める。
そして次にいつ上がるのかは、誰にも分からない。

核兵器の話に近いと思う。
誰も望んでいないのに、相手が持っているから自分も持つ。
抑止という言葉で、かろうじて釣り合っている。

AIも同じ形をしている。
止めた方がいいと思う人がいても、止める権利を持っている人はいない。
誰かが進める限り、進む。

違うのは、抑止が相手との釣り合いで成り立つのに対して、こちらは向かい合っている相手が人間ではないことだ。
止める理由を、人間の側だけで用意しないといけない。

来ること自体は分かっている。
いつ来るかが分からないだけだ。
そして、そこに私たちの側の決定権はない。

どこに足を置いているか

大きな変化を前にして、楽しみでもあるし、怖くもある。
両方あるのが正直なところだ。

立っていられなくなる人は出ると思う。
ただ、それは弱いからではなく、既定路線に自分をどれだけ預けていたかで決まる話だと思う。
順番が前提でなくなったとき、その前提の上に全部を載せていた人ほど、置き場所がなくなる。

そして順番が前提でなくなると、残るのは、何のために生きるのかという問いの方になる。
これまではその問いを、順番が代わりに引き受けてくれていた。
次に進む場所が先に決まっていれば、意味を自分で決めなくてよかった。

もう一段手前に、人間とは何なのか、という問いもある。
人がやってきたことの大半を機械ができるなら、人の側に残るものを、言葉にしないといけなくなる。
これまでは、やっていること自体が、その答えの代わりになっていた。

仕事を守る準備をしても、順番そのものが動くのなら、効く範囲は狭い。
できるのは、自分がいま何の上に立っているかを、先に知っておくことくらいだと思う。

変化そのものを選ぶことはできません。
選べるのは、何の上に立っているかだけだと思っています。

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